パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2024年9月25日

パリ2024パラリンピック競技大会

日本代表選手団は41個のメダルを獲得

パリ2024パラリンピック競技大会が9月8日に閉幕した。難民選手団を含む史上最多の167の国・地域から約4,400人のアスリートが参加。12日間にわたり世界最高峰の熱戦が繰り広げられた。日本代表選手団は22競技中、21競技に出場し、41個(金14、銀10、銅17)のメダルを獲得した。

車いすラグビー日本代表は悲願の初優勝を遂げた

車いすラグビー、ゴールボール男子が頂点に!

団体競技では、車いすラグビー日本代表が決勝でアメリカを48-41で下し、初優勝を遂げた。予選を3戦全勝で勝ち上がった日本は準決勝で宿敵・オーストラリアに延長戦の末に競り勝ち、決勝では堅い守りでアメリカの攻撃力を封じて逆転勝ち。悲願の金メダルを手にした。キャプテンの池透暢(日興アセットマネジメント)は「みんなの夢がかなった最高の瞬間」と、感極まった。東京大会は出場回数が少なく悔しさを味わったチーム最年少・22歳の橋本勝也(同)はパリ大会では5試合すべてに出場。持ち味のスピードと突破力でトライを量産し、勝利に貢献した。橋本は「東京大会から成長できたかな」と、うれし涙を流していた。

ゴールボール男子も歴史的快挙を達成した。攻守とチーム力の高さで予選と決勝トーナメントを勝ち上がった日本は、決勝でウクライナと対戦。延長戦を経て4-3で勝利し、優勝を果たした。日本男子がメダルを獲得するのは初。キャプテンの金子和也(Sky)は試合後、「応援してくださった皆様の声援に勇気をもらい、力いっぱいのプレーができた」と語り、サポートしてくれた人々と仲間に感謝していた。

「挑め、自分史上最強。」を体現した選手たち

リオ大会の銅、東京大会の銀に続き、金メダルを獲得した上地

日本の金メダル第1号は、水泳の鈴木孝幸(ゴールドウイン)。競技初日に男子50m平泳ぎ(SB3)を48秒04で制した。北京大会で記録した自己ベストの48秒49(当時の世界新記録)を16年越しに更新。日本代表選手団のスローガン「挑め、自分史上最強。」をまさに体現した。また、木村敬一(東京ガス)が男子100mバタフライ(S11)と男子50m自由形(S11)の2種目で金メダルを獲得。ベテラン勢が圧巻の存在感を見せた。

車いすテニスの上地結衣(三井住友銀行)は、女子シングルス決勝で“絶対女王”のディーデ・デ フロート(オランダ)と対戦。積み重ねた技術と戦術を駆使し、かつて28連敗を喫したライバルに逆転勝利し、日本の女子で初めて金メダルを獲得した。上地は、田中愛美(長谷工コーポレーション)と組んだダブルスでも優勝し、単複二冠を達成した。男子シングルスは、小田凱人(東海理化)が18歳の史上最年少で頂点に立った。決勝では世界ランキング1位のアルフィー・ヒューエット(イギリス)に先にマッチポイントを握られながら強靭な精神力で巻き返し、満員の会場を沸かせた。また、三木拓也(トヨタ自動車)と組んだダブルスで銀メダルを獲得した。

柔道は女子57㎏級(J2)の廣瀬順子(SMBC日興証券)が初戦の準々決勝から決勝まですべての試合で一本勝ち。リオ大会の銅メダル以来、2大会ぶりにメダルを手にした。男子73㎏級(J2)は、瀬戸勇次郎(九星飲料工業)がオール一本勝ちで金メダルを獲得。瀬戸は東京大会以降のルール改正により、男子66㎏級から階級を変更して臨んでいた。また、卓球ではパラリンピック初出場の和田なつき(内田洋行)が女子シングルスで東京大会金メダリストを破り、金メダルに輝いた。日本勢のシングルス優勝は男女を通じて初の快挙。

自転者競技では、杉浦佳子(総合メディカル)が女子個人ロードレース(C1-3)で優勝。序盤のトラック種目は体調不良もあり不完全燃焼に終わったが、出場最終種目で“ロードの女王”の本領を発揮した。バドミントンでは、男子シングルスで梶原大暉(ダイハツ工業)が、また女子シングルスで里見紗李奈(NTT都市開発)が、それぞれライバルとの激闘を制し、見事2連覇を果たした。

田口団長「強化環境の整備が好結果につながった」

開会式で国旗を持って入場する石山(中央)

パリ大会で獲得した金メダルの数は、13個だった東京大会を上回り、継続した強化の取り組みが結果に結びついたといえる。金メダルだけでなく、射撃では水田光夏(白寿生科学研究所)が混合10mエアライフル伏射(SH2)で日本パラ射撃界初となる銅メダルを獲得した。陸上競技では、福永凌太(日本体育大大学院)が男子400m(T13)、鬼谷慶子が女子円盤投げ(F53)でそれぞれ銀メダル、川上秀太(アスピカ)が男子100m(T13)で銅メダルを獲得するなど、初出場組が結果を残した。

また、パリ大会には選手発掘事業「J-STARプロジェクト」出身者8人が5競技に出場。開会式の旗手に抜擢された5期生の陸上・石山大輝(順天堂大)は、男子走幅跳(T12)で5位に入賞。同じく5期生のゴールボール男子代表の鳥居陽生(国立障害者リハビリテーションセンター)は前述のとおり、優勝メンバーのひとりとなり、水泳の木下愛萊(三菱商事)は女子200m個人メドレー(SM14)で銅メダルに輝いた。そのほか、4期生のボッチャの一戸彩音(スタイル・エッジ)はBC3女子個人戦で7位に入賞するなど、成長の証を見せた。

日本代表選手団の田口亜希団長は会見を開き、好成績の背景について、「日本代表選手団としては、パラリンピックを目指すアスリートが優先的に利用できる練習施設NTC・イースト(味の素ナショナルトレーニングセンター屋内トレーニングセンター・イースト)が2019年に完成し、集中的に強化できた結果と考える。また、競技全体の強化を担うハイパフォーマンスディレクターの設置や、競技団体間で連携してクロストレーニングを行うといった機会が増えたことも大きい」と分析する。また、「今大会は“史上初”というキーワードが印象に残る」とし、4年後のロサンゼルス大会に向け、「さらに選手が輝けるよう、取り組んでいきたい」と結んだ。

(MA SPORTS)