パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年1月23日

2025 ジャパン パラアイスホッケーチャンピオンシップ

8カ月ぶりの実戦で日本は3位

パラアイスホッケーの国際大会「2025 ジャパン パラアイスホッケーチャンピオンシップ」が1月10日から6日間にわたり、長野市のビッグハットで開かれた。昨年5月の世界選手権5位の韓国、同7位のイタリア、同8位の日本と、3カ国から選手を集めたTeam MAXの4チームによるトーナメントを実施。優勝したイタリア、2位の韓国に続き、日本は3位だった。

キャプテンとしてチームをけん引した熊谷昌治

予選リーグは1勝2敗

日本代表にとって今大会は世界選手権以来、8カ月ぶりの国際大会。宮崎遼コーチが全試合の指揮を執った。まずは総当たりの予選リーグに臨んだ日本は、イタリアに0-4、韓国に1-6で敗れたあと、Team MAX(以下、MAX)に3-2で勝利し、1勝2敗とした。

初戦のイタリア戦は先制され、第2ピリオドは日本が攻撃リズムを作るが無得点。第3ピリオドに12本のシュートを受けて3失点を喫した。韓国戦は、試合終了3分前に新津和良(長野サンダーバーズ)が得点をマークするが、第2ピリオドまでに相手のペナルティによる数的有利のパワープレーのチャンスで逆にゴールを許したことが最後まで響いた。MAX戦は、試合開始11秒で石川雄大(東京)が鮮やかにシュートを放ち、先制点を決めた。その後、第3ピリオドに今季はアメリカでプレーする伊藤樹(ロスパーダ関西)が2得点と気を吐いた。

準決勝で敗れ、3位決定戦は勝利

本来はFWの伊藤。DFを経験し、「視野が広くなったのは収穫」と語る

準決勝は予選リーグ2位の韓国と再戦。ともに無得点で迎えた第2ピリオド、両チームにペナルティが科され、4人対4人のプレー中にわずかに陣形が崩れたところでシュートを決められた。第3ピリオド、追いつきたい日本は積極的に得点を狙うが、相手の堅守に阻まれる。そして、日本のクリアが甘くなったパックを韓国に奪われるなどして2失点し、0-3で敗れた。

3位決定戦では準決勝でイタリアに屈したMAXと対戦。序盤からゴール前への意識を高め、積極的にシュートを打っていく日本。0-0で迎えた第2ピリオドの終了間近に、パワープレーの場面で伊藤が待望の先制点を決めた。第3ピリオドの終盤にはMAXがGKをあげて6人攻撃を仕掛けるなか、伊藤が相手のディフェンスをかわしてロングシュート。これが無人のゴールに吸い込まれ、2-0で勝利した。

また、決勝はイタリアが韓国を4-2で下し、優勝を果たした。ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会(以下、ミラノ2026大会)開催国のイタリアは、元アメリカ代表でパラリンピック金メダリストのニッコー・ランデロスがイタリア国籍を取得して加入。攻撃力が向上し、格上の韓国に連勝するなど存在感を見せた。

パラリンピックに向けて得た収穫と課題

全試合の指揮を執った宮崎コーチ(左)

今大会は守護神のGK堀江航(東京アイスバーンズ)が欠場し、岡部学(東海アイスアークス)が5試合中4試合で先発マスクを被った。これまでは控えとしての出場が多かったが、スタメンでゴールを守り、失点はあったものの貴重な実戦経験を積んだ。また、宮崎コーチが「ミラノ2026大会前の大事なシーズンを見据え、今大会はたくさんチャレンジをしたい」と話していたように、登録した選手全員が試合に出場した。そのなかで、FW登録の19歳の伊藤がDFで起用されたほか、18歳の鵜飼祥生(東海アイスアークス)がセンター、19歳の森崎天夢(北海道ベアーズ)がウイングでファーストセットを担うなど、10代選手も奮闘した。

一方、チームの得点力不足が浮き彫りになった。予選リーグは3試合で4得点に留まり、準決勝は無得点。3位決定戦は21本のシュートを放ちながら2得点と、課題が残った。全試合を観客席からチェックしていた中北浩仁監督は、「ポジショニングができておらず、とくにニュートラルゾーンでのフォーメーションの崩れが起こっていた。韓国やイタリアのスピードのある選手に対峙すると、日本のディフェンスが引き気味になり、フォワードとギャップができてしまう。そこのコントロールも上手くいっていなかった。ボディチェックも修正が必要だと感じた」と振り返り、「こうした細かいミスが全体の崩れにつながる。今一度、基本に立ち返ってやり直していきたい」と話した。

来年に迫るミラノ2026大会のパラアイスホッケー出場枠は「8」。今年開催予定の世界選手権Aプールの上位5チームがパラ出場権を獲得し、残りの枠をAプール下位3チームと日本代表が出場する世界選手権Bプールの上位3チームによる最終予選で争う。ただ、日本と同様にBプールを戦うイタリアが現時点で「8枠目(開催国枠)」を保持しているため、最終予選では実質上位2位以内に入ることが出場切符獲得の条件となる。2大会ぶりのパラリンピック出場を目指す日本は、今大会で得た収穫と課題をチームづくりにどう活かしていくのか。今後の戦いに注目が集まる。

(MA SPORTS)