パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年2月10日

天皇杯 第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会

神奈川VANGUARDSが3連覇達成!

「天皇杯 第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会」が1月31日から3日間にわたり、東京体育館で開かれた。50回を記念して規模を拡大し、各地域の予選会を勝ち抜いた16チームが参戦。決勝は昨年と同じ神奈川VANGUARDS対埼玉ライオンズのカードとなり、61-41で神奈川VANGUARDS が勝利。3大会連続6度目の優勝を飾った。

“スター軍団”の神奈川VANGUARDSが盤石の強さで大会を制した

オフェンス強化、主導権握った神奈川VANGUARDS

王者・神奈川VANGUARDSが進化を見せた。東京2020パラリンピック競技大会銀メダリストの古澤拓也(3.0)や鳥海連志(2.5)、髙柗義伸(4.0)、前回大会MVPの丸山弘毅(2.5)ら、スター選手がずらりとそろう。その選手層の厚さを活かし、1回戦から決勝までの4試合すべてで異なるスタメンで臨むなど、ユニットの豊富なバリエーションも光った。

3ポイントシュートとインサイドを強化してきたなかで、決勝でも序盤で古澤と丸山が3ポイントシュートを決めるなど期待に応えた。新加入の塩田理史(3.0)もプレータイムを伸ばし、40分間フル出場の髙柗はインサイド、アウトサイド両方からシュートを決めてチーム最多の26得点をマーク。キャプテンの前田柊(1.5)は、ローポインター屈指のスピードを活かしたアグレッシブなディフェンスでチームを支えた。

前回大会は試合時間残り33秒で逆転に成功し、劇的な優勝を飾った。それから1年、オフェンス面を磨いて迎えた今大会は、常に試合の主導権を握る盤石の勝利だった。前田は「選手一人ひとりが自分の役割を明確に把握しながら取り組んできたことが実行できた」と、チームの成長を評価した。また、大会MVPに選出された鳥海はアシスタントコーチを兼任。客観的に試合の展開を読み、ベンチでもコートでも的確に指示を出すなど、フル稼働で存在感を示した。

重圧と戦った一年、埼玉ライオンズが見せた意地

シュートを狙う鳥海(中央)とブロックに行く北風(左端)

埼玉ライオンズは悲願の初優勝を逃したが、苦しいチーム事情のなかで底力を発揮した。前回大会終了後、チームの主力だった赤石竜我(2.5)と朏秀雄(4.0)が移籍。その一方で、熊谷悟(3.5)と16歳の久我太一(1.5)が新たに加わった。再構築に取り組む途中にありながらも、準々決勝では前回3位の伊丹スーパーフェニックスに競り勝ち、同日の準決勝では富山県車椅子バスケットボールクラブ(以下、富山県WBC)との延長戦を制するなど意地を見せた。決勝後、フル出場でチームを盛り立てたキャプテンの北風大雅(4.5)は、「去年より弱くなったと思われるのが本当に嫌だった。負けたことは本当に悔しいが、新チームでも決勝に駒を進める強さを見せられた」と話し、顔を上げた。

3位はNO EXCUSE。今大会は屈指の激戦ブロックに入ったが、1回戦で千葉ホークス、準々決勝でワールドバスケットボールクラブと、それぞれ優勝経験のある強豪を撃破した。準決勝では神奈川VANGUARDSに屈したものの、3位決定戦では快進撃を続けていた富山県WBCを58-38で下した。序盤こそリードを許すが、インサイドの強さを武器に第2Qに逆転に成功。後半は堅い守備で相手のファールを引き出すなどチャンスの芽を摘み取る対応力を見せ、点差を広げた。及川晋平ヘッドコーチは、「選手のコンディション不良やケガなどでシーズンを通して練習できない脆弱なところもあったが、全員プレーで3位にステップアップできて良かった」と語った。

女子選手や健常者プレーヤーも活躍

「女子選手が増えたら嬉しい」と語る埼玉ライオンズの財満

天皇杯はパラリンピックのルールとは異なり、男女混成で行われる。財満いずみ(1.0W)は、2022年に埼玉ライオンズに入団。女子チームではWingでプレーし、女子日本代表としても活躍する豊富な経験を発揮している。延長戦となった準決勝ではほぼフル出場を果たし、決勝では追いかける展開の第4Qの重要な局面で冷静にゴール下にポジションを取り、2連続でシュートを決めた。財満は終盤の体力不足に課題が残るとしながらも、「女子の1点プレーヤーでも戦えると、手ごたえを感じた試合だった」と振り返り、「この先も男子にまじって活躍する女子選手が続いてほしい」と期待を込めた。

また、健常者も出場できる。財満のチームメートでもある大山伸明(4.5K)は2019年に加入。今大会もゴール下で片側の車輪を浮かせてより高い位置からシュートを狙うティルティングを幾度と繰り出し、初戦から決勝までの4試合でいずれもチーム最多得点をたたき出した。大学時代に車いすバスケットボールに出会い、競技をスタート。普段は病院で看護師として働いている。週に3~4回は仕事のあとに練習に参加しているという大山。「自分にディフェンスが寄ってきても、仲間が決めてくれる。自分が点を取りに行くことと、チームメートをアシストするプレー、これからもその両輪で戦っていきたい」と力強く語った。

(MA SPORTS)