パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年9月30日

第94回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース

パラサイクリングトラック種目の日本一決定戦開催!

8月24日から2日間にわたって、「第94回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース」のパラサイクリングの部が静岡県の伊豆ベロドロームで開催され、競技を始めたばかりの選手やパラリンピアンら、9人が参加した。24日は各クラスの1㎞タイムトライアル、25日は個人パーシュートが行われ、記録更新に挑んだ。

1㎞タイムトライアルでは世界新記録を樹立した杉浦(写真は3㎞個人パーシュート)

ロード世界女王の杉浦がトラックでも歴史をつくる!

パラリンピックのロード種目で2大会連続で金メダルを獲得している杉浦佳子(総合メディカル/TEAMEMMACycling)が、トラックでも金字塔を打ち立てた。女子C3クラスの1kmタイムトライアルで杉浦は、1分16秒475の世界新記録を樹立。エントリーは杉浦のみで単走となったが、最後まで力強くペダルをこぎ続け、これまでの世界記録を6秒以上更新する圧巻の走りを見せた。

この種目は、今年から従来の500mから男子と同じ1㎞に変更された。スプリント力に加えて持久力も求められるが、世界を主戦場に戦ってきた杉浦は豊富な経験を存分に発揮し、後半もタイムを落とすことなく走り切るなど、完璧に対応してみせた。これまでの世界記録は、パリ2024パランピック競技大会(以下、パリ2024大会)の500mタイムトライアルで金メダルを手にしたカナダのメル・ペンブルで、杉浦は「彼女の記録を超えて、それが世界記録になって嬉しい」と振り返った。一方で、7月の『Challenge The Izu Velodrome』でマークした自己ベストのタイムにはわずかに届かず、「もうちょっと速く走りたかった」と、コメントに悔しさもにじませた。

杉浦は3㎞個人パーシュートでも日本記録を更新。今後については、「健常者の実業団レースなどにも力を入れ、インクルーシブな自転車レースを広めていきたい」と、言葉に力を込めた。

パラ水泳日本代表の西田が初出場

「水泳にも自転車にも、どちらにもつながるような強化をしていきたい」と話す西田

女子C1クラスには西田杏(シロ)が唯一エントリー。1㎞タイムトライアル、3㎞個人パーシュートともに日本新記録を樹立した。西田はパラ水泳の選手で、9月の世界選手権代表にも選出されている。パリ2024大会後に競技続行を決め、より速く泳ぐためのクロストレーニングとして、大学時代に1年間経験した自転車競技を選び、昨年10月からスタートした。西田は「自転車に乗る感覚はすぐに思い出せた。レースとしてのトラック種目は今回が初めてだったけれど、楽しかった」と笑顔を見せた。

身ひとつで戦う水泳とは異なり、自転車は道具を用いて戦うスポーツだ。西田は「自分の身体だけでやる以上の速さを出せることが道具を使う競技の魅力だと思う。自転車でも世界に通用するようなタイムが出せるように、コツコツと頑張りたい」と話した。

女子C2クラスは、中道穂香(テレビ愛媛)が2種目とも安定した走りを見せた。生まれつき右脚がなく、左脚のみでペダルをまわす中道。スタートからいかにスピードに乗るかという課題に向き合い、強化に取り組んできたといい、1㎞タイムトライアルでは日本新記録となる1分35秒064をたたき出すなど成果を見せた。中道は「パラリンピック出場が目標。これからタイムをどんどん伸ばしていきたい」と、力強く語った。

大学生の亀田がパワフルな走りで2種目日本新!

亀田は持ち前のパワーを活かした力強い走りを見せ、2種目で日本新記録をマークした

男子はもっとも障害が軽いC5クラスに3人がエントリーした。1kmタイムトライアルを1分10秒189の日本新で制した亀田琉斗(日本大)が、4㎞個人パーシュートでも日本記録を塗り替えて頂点に立った。1kmタイムトライアルは全力を出し切り、4km個人パーシュートも良いラップタイムを刻めたという亀田は、「今年は日本記録を狙っていたので、とても嬉しい」と語った。

亀田は先天性左前腕欠損でもともとアメリカンフットボールに取り組んでいたが、競輪場走行会での体験がきっかけとなり、2021年にパラサイクリングを始めた。自転車競技の強豪である日本大に進学後は、全日本や国体などで結果を残す仲間の活躍に刺激を受けながらともに練習に励んでいる。これまでトラック種目では義手を使っていなかったが、1年ほど前から装着して走るようになり、姿勢が安定したことでスタートのタイムも上がったという。アメフト時代から約20kg減量しつつも、パワフルさや瞬発力は維持し、それを活かした力強い走りが大きな武器。亀田は「いずれワールドカップや世界選手権でメダルが獲れる選手になりたい」と、意気込みを語った。また、2種目とも2位は福冨伸彦(NTT東日本/NTI)、3位は沼野康仁(usp lab.VC SPELENDOR)だった。

C3クラスの1kmタイムトライアルは藤田征樹(藤建設)が、また3㎞個人パーシュートは仙代圭紀がそれぞれ唯一出場し、好タイムでゴールした。視覚障害クラスでは、パラ陸上でも実績を残す山路喬哉(Sky)が吉田唯斗パイロットとペアを組んで1mタイムトライアルに出場し、1分5秒572をマークした。

(MA SPORTS)