パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2025年10月9日

木下グループ車いすテニスチャンピオンシップス2025

小田が3連覇達成!若手有望株も奮闘

「木下グループ車いすテニスチャンピオンシップス2025(以下、木下ジャパンオープン)」が9月27日から3日間にわたり、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートで行われた。今大会は、日本で唯一のATP(男子プロテニス協会)ツアー公式戦である「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2025」における車いすテニスの部で、シングルス8人、ダブルス4組で頂点を争った。

圧巻の強さを発揮し、見事大会3連覇を果たした小田

王者の貫禄を見せた小田「最高な日になった」

シングルスの決勝は、1回戦で城(たち)智哉(森六)、準決勝で髙野頌吾(かんぽ生命)をそれぞれストレートで破った世界ランキング1位で第1シードの小田凱人(東海理化)と、1回戦で河野直史(ロイヤリティマーケティング)、準決勝でモハマド・ユソフ(マレーシア)を下した第2シードの荒井大輔(BNPパリバ)が対戦。試合はセンターコートの有明コロシアムで行われ、小田が6-0、6-0で荒井を退け、3連覇を達成した。

第1セット、小田がサーブから試合を作る。スピードとキレのあるサーブで荒井のリターンアウトやネットミスを誘い、第1ゲームをラブゲームでキープすると、第2・3ゲームも荒井に1ポイントも与えない完璧な立ち上がりを見せた。第2セットの第5ゲーム、荒井は相手のダブルフォルトや自身のリターンエースなどでブレークのチャンスを掴むが、ここぞという場面で集中力を高めた小田のサーブに屈し、ゲームを落とす。試合は小田が最後まで主導権を握り、完勝した。

荒井は「凱人のサーブが良いのは分かっていたが、あそこまで自分がリターンができないとは思っていなかった」と、小田のプレーに脱帽。一方の小田は「荒井さんは僕が車いすテニスを始めた8歳、9歳のころから一緒に練習をしてきた仲。海外ツアーの情報を教えてもらったり、昔の思い出がたくさんある。こうして同じ舞台を対戦相手として共有できたことが、すごくうれしい。本当に最高な日になった」と笑顔を見せていた。

髙野は準決勝で小田に敗戦も「また戦う姿を見せたい」

髙野はシングルスでベスト4、ダブルス優勝の好成績をおさめた

今大会は日本の若手・次世代選手にとって、テニスの聖地・有明で同世代やトップ選手と対峙する貴重な経験の場にもなっている。そのなかで、単複ともに存在感を見せたのが世界ランキング32位で22歳の髙野だ。シングルス1回戦では同51位で21歳の川合雄大(エヌエヌ生命保険)と、6(6)-7、6-3、6-4のフルセットの激闘を演じた。第1セットからタイブレークにもつれ込む接戦となり、セットカウント1-1で迎えた第3セットも終盤で互いにブレークし合うなど譲らない展開が続いたが、最後は高野が強打を決め、3時間3分の熱戦に終止符を打った。

準決勝では小田に挑戦。試合開始直後から小田の強烈なサーブを冷静に見極め、相手のボディ周りに打ち込んで甘い返球を誘ったり、小田の動きを止める強烈なリターンエースを決めたりして、第1セットの第1ゲームでいきなりブレークに成功した。結局、試合にはストレートで敗れたが、会場で2番目に大きいショーコートで大勢の観客の前で世界1位を相手にやり切った充足感で満たされたようす。高野は「相手が嫌がるプレーを狙っていたし、上手にできたと思う。すごく楽しかった」とコメントした。また、髙野はユソフとペアを組んだダブルスで見事優勝を果たした。

木下ジャパンオープンは3度目の出場。高野は「ATP500の大会でプレーする機会はなかなかないので、毎年の大きな楽しみのひとつになっている。車いすテニス界のレベルも上がっているので、そこで戦う姿をまたお見せしたい」と、力強く語った。

世界1位と対戦の城「いずれ彼らと互角に戦えるプレーヤーに」

社会人となり、さらなる成長に期待がかかる城

また、世界ランキング50位で22歳の城は、2度目の木下ジャパンオープン出場を叶えた。オープニングゲームとなったシングルス1回戦で小田と対戦。ゲームを奪うことはできなかったが、多彩な球種を使い分けたサーブで相手のリターンエースを防ぐなど、積極的なプレーを披露した。初出場だった2022年大会では国枝慎吾(ユニクロ)と対戦し、世界トップの技とスピードを体感。そして今回、男子をリードする小田との顔合わせとなった。城は「前回も今回も、世界ランキング1位の選手と対戦した。前回は雨の影響でインドアコートに変更になり、お客さんがいない中での試合だったが、今回はショーコートという大きな舞台で試合ができて光栄だった」と振り返る。

今春、大学を卒業し、4月から企業に所属しながら車いすテニスプレーヤーとして活動する。今年は今大会が13大会目と、国内外問わず積極的に大会にエントリーし、腕を磨いている。「ランキングを徐々に上げて、20位以内までいくのが目標。もっと実力をつけて、いずれ小田選手と互角に戦えるプレーヤーになって、また有明に戻ってきたい」と、言葉に力を込めた城。この経験を糧に、さらなるスケールアップを誓っていた。

(MA SPORTS)