パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

<<一覧に戻る

2026年6月5日

パラ水泳ワールドシリーズ富士-静岡2026

アジアパラ代表選考を兼ねた国際大会が静岡で開催

パラ水泳の国際大会「パラ水泳ワールドシリーズ富士-静岡2026」が5月29日から3日間にわたり、静岡県立水泳場で行われた。パラリンピック、世界選手権に次ぐ位置づけの大会で、27カ国249人がエントリー。日本選手にとっては、10月の愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会の代表選考も兼ねており、各種目で熱戦が繰り広げられた。

国際大会に復帰した木下は、4種目でアジアパラ派遣基準記録を突破

闘病を乗り越えた木下が4種目で派遣A突破

ワールドシリーズは、異なる障がいクラスの選手が同じレースで競い、実際のタイムをもとにクラス別に算出したWPSポイントで順位を決める「マルチクラス競技形式」で実施される。

女子では、木下あいら(S14/SB14/SM14/個人)が4種目でアジアパラ競技大会の派遣基準記録A(以下、派遣A)を突破した。100m平泳ぎ決勝では、予選で記録した自己ベストをさらに更新する1分17秒53をマークし、966ポイントで優勝。200m個人メドレーと100mバタフライでは2位。200m自由形では4位となったが、決勝では予選から3秒以上縮める力泳を見せた。

木下は難病の再生不良性貧血と診断され、パリ2024パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)後の11月から競技から離れて治療に専念。投薬治療によって症状が改善し、骨髄移植を回避して再びプールへ戻った。今年1月の日本知的障害者選手権新春水泳競技大会(千葉)で復帰し、今大会は復帰後2戦目にして初の国際大会となった。

「水泳が楽しみだったのに、泳げなくなって希望がなくなったようだった」と振り返る木下。それでも復帰後は着実に結果を残し、「一年前には想像もできなかった。レースに出られるだけでうれしい」と笑顔を見せた。現在も再発防止のため服薬を続けながら競技に取り組んでいるが活動制限はないといい、「アジアパラでは自己ベスト更新と金メダル獲得を目指したい」と、意気込みを語った。

パラリンピアンたちが存在感を発揮

男子100m平泳ぎを制した山口(中央)。アジアパラでも活躍が期待される

男子100m平泳ぎでは、SB14クラスの世界記録保持者・山口尚秀(四国ガス)が予選をトップで通過。決勝では自身の世界記録に0.39秒差まで迫る1分2秒92をマークし、優勝した。また、木村敬一(S11 /SB11/東京ガス)は同種目と100mバタフライで派遣Aを突破。鈴木孝幸(S4/SB3/GOLDWIN)も男子50m自由形と平泳ぎ、100m自由形で派遣Aを上回るタイムを記録した。

男子100m背泳ぎでは日本勢が表彰台を独占。パリ2024大会のS8クラスの銀メダリスト・窪田幸太(NTTファイナンス)は予選で派遣Aを突破し、決勝ではさらにタイムを伸ばして銀メダルを獲得した。「後半の持久力」が課題だった窪田は、「今大会はいいレースができた。アジアパラに向けて収穫があった」と手応えを口にした。決勝は齋藤正樹(S14/伊藤忠丸紅鉄鋼)が制し、荻原虎太郎(S8/あいおいニッセイ同和損保)が3位に入った。

南井瑛翔(S10/SM10/トヨタ自動車)、富田宇宙(S11/SM11/ EY Japan)はそれぞれ3種目で派遣Aを突破。富田は「アジアパラは多くの人に見てもらえる機会。結果を出して盛り上げたい」と語った。

女子では、笠本明里(S13/SB13/神戸楽泳会)が100m背泳ぎと100m平泳ぎで派遣Aを突破し、2018年のジャカルタ大会以来となるアジアパラ出場を手繰り寄せた。また、2大会ぶりのアジアパラ出場を目指す水上真衣(S8/東京ガス)は、女子100mバタフライ予選で自己ベストを12秒以上更新する快泳を披露。100m自由形では派遣Aをクリアし、「杭州大会出場を逃したときから、自国開催のアジアパラには必ず出ると決めていた。今回もメダルを獲りたい」と、力を込めた。

次世代を担う若手選手も躍動

中学2年の山田は男子400m自由形で好成績をおさめた

育成世代の選手らも大きな存在感を示した。男子400m自由形では、山田龍芽(S6/宮前ドルフィン)が予選で自己ベストを10秒以上更新する5分39秒22で泳ぎ、派遣Aを突破。昨年の同大会で国際大会デビューを果たした中学2年生は、「去年と同じように緊張はしたが、今年は気持ちを切り替えて泳げた。派遣記録をクリアできて、本当にうれしい」と笑顔を見せた。

同種目ではS9クラスのアジア記録保持者である17歳の川渕太耀(NECグリーンスイミングクラブ溝の口)も派遣Aを突破。パリ2024大会以降に取り組んできたパワー強化の成果を発揮し、アジアパラでは連覇を狙う。

女子では、中学2年の都甲万結(S9/大分パラ水連)が5種目に出場し、最終種目の50m自由形決勝で派遣Bをクリアした。予選ではS7クラスの世界選手権銀メダリストのサラ・ガルバス・ブランコ(コロンビア)の隣のレーンで泳ぎながらも、「自分のペースを崩さないことを意識した」と、冷静なレース運びで結果につなげた。

昨年、パラ水泳デビューを果たした中学3年の佐藤璃來(S14/JSSスイミングスクール立石)は、今大会が2度目の国際大会。力強い泳ぎで3種目の派遣Aを突破し、「最後まで諦めずに泳ぎ切りたい。出場する全種目で自己ベストを出したい」と、アジアパラへの意欲を語った。

(MA SPORTS)