東京2020パラリンピック競技大会にて、金メダルを獲得した佐藤友祈選手(陸上男子1500メートルT51・52、400メートルT52)と、銅メダルを獲得した上与那原寛和選手(陸上男子1500メートルT51・52、400メートルT52)が8月30日、記者会見に出席し、メダル獲得から一夜明け、それぞれ心境を語りました。
Q: メダルを獲得し一夜明けた感想は?
佐藤選手:昨日、僕の全種目の競技が終了しました。リオパラリンピックでアメリカのライバルのマーティン選手に敗れてから、東京大会で金メダルを獲得することを目標にしてきたのですが、無事実現することができてうれしいです。
上与那原選手:400m、1500mが終わり、銅メダルを2つとることができました。嬉しい想い、複雑な思いがありますが、取れたことに感謝したいと思います。
Q: 今大会のメダル獲得は、競技人生においてどんな意味をもちますか?
佐藤選手:リオ大会で敗れてから、金メダル獲得する、パラリンピックのタイトルをとると決めて、突き進んできて獲得できて、僕の競技人生において重要なメダル、大会になりました。コロナ渦という特殊な条件下で大会を開催してくださった組織委員会はじめ、サポートしてくださっているボランティアのみなさん、普段から応援してくださっているいろんな人達に支えられて、この舞台に立つことができて、最高なパフォーマンスを発揮することができました。メダルの重みは、そういう人たちの思いも入っていると僕は感じているので、生涯忘れることがない金メダル2つになると思います。
上与那原選手:今大会は、コロナの中でたくさんの犠牲を払い、ご尽力した医療従事者、大会関係者のおかげで開催していただいたと思っています。その中でメダルを獲得できたことは嬉しいことです。また、トラック種目で初めての金メダル獲得となります。私にとって一つのスタートラインになっていくと思いますので、しっかり思いをもって、重みを受け止めていきたいと思います。
Q: メダルを獲得し、新たに芽生えた思いや今後の競技人生の目標は?
佐藤選手:今大会の目標として公言していた世界記録を更新しての金メダル獲得を2種目で達成すると決めてチャレンジしてきましたが、世界記録更新はわずかに届かず、パラリンピックレコード更新のみに終わっているのでまだ満足することはありません。次はパリ大会で世界記録更新、金メダルの獲得を必ず達成していきます。
上与那原選手:まだ確定ではないと思いますが、今回1500mで日の丸3つを掲げてきた思いがあります。いつ実現するか分かりませんが、できるように準備はいつでもしていきたい気持ちが強いです。
Q: 世界のトップとして、今後パラスポーツの普及やT52に対する理解について取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
佐藤選手:現役でまだトライし続けていきたいと決めているので、競技人口を増やしていく、東京大会の100mの後半のしびれたレース展開を、もっと多くの人に届けられたら良いと思うので、体験会などを積極的に行っていきたいと感じました。
Q: パラリンピックが終わりすぐ、32歳の誕生日を迎えると思うがどう過ごしたいですか?
佐藤選手:32歳の誕生日、妻と一緒に過ごしたいと思っていますが、来年すぐに世界パラ陸上があるので、しっかり金メダル獲得を狙っていきます。
Q: 昨日遅い時間で、今日も朝から生放送の番組に出ていましたが、寝られましたか?
上与那原選手:3時間半は寝ました。
Q: 祝福のメッセージはどんな内容のものがありましたか?
上与那原選手:「感動をありがとう」という言葉は多かったですし、折り返し地点での50歳でも頑張ればできる、俺も頑張ろう、というメッセージが多かったです。
Q: 地元の沖縄からも多くの人が応援していました。沖縄に向けてコメントをください。
上与那原選手:守り神のシーサーが守ってくれたメダルだと思いますし、みんなが一つになれた大会だと思います。感謝の気持ちをこめて、持ち帰りたいと思います。
Q: 大会を終えて、今自分へのご褒美ありましたら教えてください。佐藤選手は奥様に向けて、上与那原選手は家族に向けてあれば教えてください。
佐藤選手:妻とは2019年に入籍して結婚しましたが、その時に約束したことが一個あって、それをかなえようかなーと。結婚指輪はしていますが、東京大会で金メダルをとったら、もう一個、妻の指輪を買うよと約束していたので、プレゼントしたいと思います。
上与那原選手:ご褒美というより、いつも何事もなく健康で帰ってきたらよいと言われていたので、今回帰って美味しいものを自宅で食べたい。焼き肉など話をしながら食べたいと思います。
Q: 「50歳頑張れる、勇気が出る」というメッセージは誰からもらいました?LINEや電話での祝福はどれくらいの量が来ていますか?
上与那原選手:誰からだったかは覚えていなくて。LINEやメッセンジャーが1,000件近く来ていたと思います。時間がなくて、全部ひらいてないです。
Q: 昨夜、選手村の部屋に戻って、同屋の伊藤(智也)選手からどのような言葉をかけてもらったり、お話がありましたか?
上与那原選手:部屋に戻った瞬間、やってはいけないハグをされて、「最高にすごい走りだった、ありがとう。」と逆に言われました。
Q: 「1500mで日の丸を3つ掲げたい。」と言われた思いを詳しく教えてください。
上与那原選手:今回、伊藤さんのクラス分け変更がありまして、T53という軽いクラスにあがったのですが、確定ではないと聞いてもいる。もしかすると、またT52に戻ってきてくれる、という思いを持ちながら、約束した日の丸3つをチームとしてあげられる思いはあります。まだいつになるか、実現できるか分からないですが、信じて一緒に切磋琢磨しながらやってきたいという思いです。
Q: いろんな方に支えられたということですが、子どもたちにメッセージあればよろしくお願いいたします。
佐藤選手:コロナ禍で色んな制限が生まれて、自由に行動できない、家族に会えないなど、いろんな人がいろんな思いを抱えて生活していると思います。ただ、僕たちが伝えられることは、予定と違った人生だとしても、家族や友達、先生、仲間と助け合って支えていくことで、コロナ禍を乗り越えることができると思っているので、夢や目標がある子ども達はあきらめず追いかけて行ってほしいと思います。
Q: 世界記録について、3年後(パリ大会)に目指す具体的な水準、技術的な改善の余地を教えてください。
佐藤選手:3年後(パリ大会)、世界記録更新、400mは54秒台に突入できると信じています。1500mは自身がもつ3分25秒08のタイムを、5秒(縮めて)、3分20秒まで縮めていきたいと思います。そのためには持久力はもちろん、スタートが重要なので、いかに早い段階でリズムにのせるかがキーになると思っているので、改めてしっかり求めていきます。
Q: 障がいのある子どもたちが陸上やスポーツに興味を持った際に、始める場所が身近にはないのが現状です。自国開催のパラリンピックが閉幕後、障がいのある人、子どもたちが日常でスポーツに親しむためにどんなことが必要ですか?
佐藤選手:僕自身、ロンドンパラリンピックを見るまでは、車いすの陸上競技があることを知らなかったですし、他の車いす競技も分かってなかったです。ただ、自国開催で多くの人たちに今回の400m、1500mのレースを見てもらうことができて、興味をもってもらえた人も多いと思うので、体験会を多く実施して、興味をもってくれた子どもたちに競技するチャンスを作っていけたら良いと思います。
上与那原選手:各地域にスポーツ協会が必ずあります。練習場所や施設が全く分からないと思いますので、まず連絡をして、地域に障害を持ちながらスポーツをしている方を確認することが大事だと思います。確認をして、いなければ、隣の県と連携をとってもらって、気楽に行って練習ができる、楽しみながら遊べるスポーツを探していく。その中でもし一生懸命やっていきたいと思えば、活躍している方に連絡をとって、体験会を開催してもらい、そこに来ていただく。そういったことをひとつひとつやっていくことから、大きな母体に道が開けてくるので、そういったことを最初にやっていくのがいいのではと思います。