東京2020パラリンピック競技大会にて、陸上女子マラソン(視覚障害T11、12)で金メダルを獲得した道下美里選手、男子マラソン(視覚障害T11、12)で銅メダルを獲得した堀越信司選手、同じく男子マラソン(上肢障害T46)で銅メダルを獲得した永田務選手が9月6日、記者会見に出席し、メダル獲得から一夜明けた心境を語りました。
Q: 選手のお三方に質問です。改めてになると思うんですが、この自国開催となった東京大会では、皆様にとってご自身にとってどのような大会どのような舞台だったでしょうか?お聞かせください。
■永田選手:
当初、自分にとって東京開催であったり、ラリンピックという舞台はほぼ無縁な状態で、開催が決まった時も普通に「東京であるんだ」とか「楽しみだなあ」って思って、自分はまだ出場が決まってない状態で、チケット買おうとか思っていた立場でした。今回自分の参加が決まってから、20年ぶりに元所属してました自衛隊の監督であったりとか、自衛隊の同期などそういった方々の協力を得たりとか、恩師とか、たくさんの方に協力していただき、また応援していただきました。本格的に練習始めたのは6月とかその辺りからだったんですが、それから昨日までの期間、自分にとって夢のような時間で、終わらないでほしいなあっていうことをずっと思いながら、かなりおっさんなんですけど、まあ本当に「夏休みが終わっちゃうよ」みたいな学生気分のような、素晴らしい時間を過ごさせていただきました。
■堀越選手:
今回でパラリンピックに出させていただくのは4回目となるのですが、 やはり自国開催ということについては自分にとって特別な思いがありまして、過去、パラリンピックでメダルを取ったことがなくて、国際大会で唯一メダルをとってないのが、パラリンピックでした。2013年に東京パラリンピックの開催が決定して、そこから8年がたつわけですが、この8年間、とにかく東京パラリンピックでメダルを取りたい、自国開催のパラリンピックでメダルをとりたいという想いをもって、ずっと競技を続けてきました。自分が生きているうちに、自分の国でパラリンピックが開催されるって言うのは、最初で最後だと思いましたし、年齢的にも30代前半でマラソンっていうのはちょうど脂が乗り切った時期で、自分にとっては本当にチャンスだと思ってました。
その上で、8年間、東京パラリンピックでマラソンを走ってメダルをとるという目標をもって競技をしてきたのですが、故障が続いたり、結果が出なかったりとか、そういう辛い時期を過ごすことのが多かった中で多くの方に支えていただいたり応援していただいたりサポートいただいたり、そういうことがあったおかげで、今回スタートラインに自信をもって立つことができました。そういう特別な想いをもって、今回走って結果を出すことができたっていうのはほんとによかったなって思いますし、そういう方の支えのおかげで、撮れた銅メダルなのでほんとに感謝しかないですし、特別な自国開催の東京パラリンピックでメダルを取れたことは本当によかったと思います。皆さんへの感謝の気持ちしかないです。また、大変な世の中ですが、我々アスリートにパラで競技をさせていただけるチャンスを作っていただけたことにも感謝しています。本当にありがとうございました。
■道下選手:
リオ大会を終えたときに、この東京大会出場が決まって、私はその時の目標に「大観衆のなかで走りたい」っていうことを取材のときに答えたことがあります。今、コロナという状況の中で、夢が叶わなかったのですが、大観衆の中で走りたいという私の思いを汲み取った仲間が、地元・大宰府の方が声を掛け合って、地元の小中学生だったり、地域の方々に声をかけて応援メッセージというのを書いてくださり、7千通を超える、体育館一杯の応援メッセージ応援メッセージ頂いたことがあります。実はそのメッセージ自体は、私は見えないので正直メッセージをいただいたことがすごく嬉しかったんですけれども、「このメッセージが読めないから悲しいんだ。」って言うことを伝えたときに、周りの仲間が「じゃあそれを音声に起こして全部私たちが伝える。」と言ってくださって、私が所属している大濠公園ブラインドランナーズクラブのサポーターの皆さんだったり、ブラインドの方が、すべて音声に起こしてくれました。コロナという状況下でいろんな不安だったり、自分の気持ちが萎えそうになることもあったんですが、そのメッセージを毎日聞きながら東京大会に向けて思いを高めていきました。なので何かできないってことがあっても、こういうことができるよっていうのを周りの仲間か 教えてもらった大会でもあったし、本当にその後押しが結果につながったというのをすごく実感できる大会でもありました。職場の方とか、アバターでつながって応援してくれて、見えない力っていうのを感じながら走れたので、コロナだったからこそ、いろんな今まで経験できなかったようなことを感じさせてもらえた、そんな大会だったなっていうふうに思います。とても今幸せです。
Q: 道下選手に質問です。 唐揚げが食べたいとインタビューでおっしゃってたと思うんですけど、昨日実際何を食べたのか、お聞かせてください。
■道下選手:
選手村で唐揚げを4つ食べましたね。唐揚げとピザとパスタと、ずっと選手村で我慢してたものをたらふくいただきました。
Q:永田選手にお尋ねします。これまで、トラック、ウルトラマラソン、トレイルランニングとさまざまな挑戦をされていて、優劣を付けるわけでなく、このパラリンピックが特別だと感じた部分や感覚はありますでしょうか?
■永田選手:
正直、自分の中でやはりこれまでやってきたスタイルが、どんなフィールドであれどんな世界であれ、ランニングには変わりないじゃないかっていうふうにずっと思いながらやってきました。そしてスタートに立つ時もいつもやってきたように、パラリンピックでも、これはマラソンでランニングと全然変わらないじゃないか、障害者の世界であれ、競技として全然変わりないじゃないかっていうふうに思ってやってきました。ただ、自分のそういった考えが、今回またちょっと甘い方に出てしまったのかなっていう風に思っていて、この世界の本当の強さであったりとか怖さであったりとか、やっぱり自分が思っているより、皆さんの強さを感じて、自分がこれまでやってきた競技との違いを強く感じました。
Q: 閉会式ご覧になられた感想をお聞かせください。
■永田選手:
率直な感想としては オリンピックの開会式よりすごく感動しました。それは自分が参加したこともありますが、参加してその感情が入ったこともありますが、本当に綺麗で感動しました。
Q: 道下選手にお聞きします。昨日眠れなかったということでしたが、夜は皆さんとどう過ごされたのでしょうか?
■道下選手:
昨日はレース終わった後、いつも振り返りでミーティングするのですが、普段でしたら15分から30分以内だった必ず終わるのですが、昨日は3時間くらいミーティングをやりまして、私たちの出会いから振り返りまして、本当に内容の濃いミーティングでした。いいところも悪いところもお互い知りながら、今回はいいところが際立ったレースだったのかなと前向きに振り返ってました。
Q: ガイドのお二方にお答えいただきたいのですが、今回、自国開催だったとか、直前で合宿をやられるなど前回大会と勝手が違うと思うのですけれども、その経験を踏まえて選手村生活で特に気をつけたことや意識をされたことがあったら教えてください。
■青山ガイド:
前回の大会のときにはレースの3週間前ぐらいに入村して、かなり長い期間選手村生活をしなければいけなかったのですが、今回は入村したのが9月1日で、直前に入村することができて、事前の直前合宿でもいい流れで来てまして、リオのときの反省を生かしながら、良い状態を保ちながら過ごすことができました。自分たちにとってどういうことがストレスになるとか、こういうことをすれば自分たちのコンディション保てるっていうのがやっぱり5年間かけて、いろんな実験をしたりとか、振り返りの中で確認することが出来たのでそれを入村してからも実行できたっていうのは大きかったです。
■志田ガイド:
北京とロンドンで3回目のパラリンピックになります。実は、t国東京で気をつけたことはないのですが、初の北京のパラリンピックのときはやっぱり地に足がついてないというか、本当に見るもの全部が新鮮で初めてでちょっと舞い上がってたと思います。2回経験を踏んで、今回はそういうのもなく、落ち着いた状態で臨めていたのかなって思います。特に、目標が金メダルっていうはっきりしていたので、そこをどうやって攻略していくかってことに集中して取り組んでいけたんじゃないかなって感じています。
Q: 堀越選手に聞きたいことがあります。昨日銅メダルを獲得したレースは、後半勝負という部分での勝利で勝負強さだったり駆け引きだったり、リオ大会後に伸ばした総合力の勝利だったと私は思っています。その上でちょっとリフレッシュしたいところかもしれないですが、次のパリに向けても明言されました。今回の1位2位といい勝負をしたいと。改めて3年後いい勝負をするために、今自分に必要なことは何だと感じていますか?
■堀越選手:
今回銅メダルを獲得できたことは良かったですが、おっしゃるとおり、1位・2位の選手とちょっと差を開けられてしまったな、本当に異次元の強さを見せつけられたような感じがしています。3年後のパリではもっとしっかり戦いたいなと思っています。その上で今自分に何が必要なのかというのは本当に色々あると思いますが、1つはやはり基礎的なマラソンを走るためのスタミナ、そしてスピード・持久力、この2つの強化というところが重要になってきます。具体的にどういった練習をしていたほうがいいのかっていうのは、ここで話すと手の内を見せることになりますので、あまり具体的な内容は控えさせていただきますが、しっかりといま一度、今までの取り組みを含めて自分自身のことを見つめ直しながら競技力と、それから1位・2位の選手、人間力が素晴らしいといいんですけど、そういった部分も分なりに成長していけたらいいなって思っています。
Q: どういうふうにリフレッシュしたいかという部分と、まだコロナ禍ではありますけれども、今後のレース予定をお聞かせください。
■堀越選手:
9月いっぱいはゆっくりしたいと思います。あとは、コーヒーが好きだったり甘いものが好きだったりして、体重管理であるとかあと貧血とかで日ごろ我慢していたので、選手村でコーヒーとか飲んではいたのですが、家に帰ったら自分でコーヒーをいれて、コーヒーのコーヒ割でも作りますかね。あとは甘いものをたくさん食べたいなって思います。あとは、しっかり10月からゆっくり体を作り直して、2月におそらく別府大分毎日マラソンがありますのでそこにむけて、また冬場マラソン練習をしっかりつんでいって、別大でもう一度、結果を残してパリにつなげていきたいと思います。